上越国境縦走・白毛門・巻機山(雪山登山)

日時 :2017年05月02日-04日
目的 :残雪期の雪山縦走
山行 :上越国境縦走(白毛門-巻機山)
メンバ:中辻(ソロ)
ルート:
02日 土合駅(05:40)発-白毛門(10:30)-JP(14:30)泊
03日 JP(05:30)-柄沢山(13:00)-コル(14:30)泊
04日 コル(07:30)-巻機山(11:00)-清水村(14:30)下山

クマにもあった孤独との戦いでした。



事前に天気分析を観ても悪天候になる要素はなく、ゆっくりと移動する移動性高気圧に覆われることが分かりました。ただ、3日後の予測は難しいのでこの点だけ不安でした。もともと、このコースは数年前から立てていましたが、天候に恵まれず、また、雪が少ないと藪こぎになってしまうので計画倒れになっていました。
つまり、登山道でもなく、また、逃げ場もないルートなのです。



土合駅に車を止め、白毛門を目指します。途中から雪がありましたので歩きやすかったです。白毛門山頂手前の登りは、セラックの崩壊の危険がありましたので、とにかく、スピードを速く登りました。それから、朝日岳までは順調で雪も多く、また、登山者も少なかったので、歩きやすかったです。朝日岳を過ぎたジャンクションピークで一泊しました。テント内で翌日の危険性を考慮すると、実は引き返そうと思っていたのは事実です。これ以上進むと、殆んど登山者がおらず、また、雪庇、雪田での滑落、セラックの崩壊、シュルントへの転落・踏み抜きなどあるからです。



翌朝の天気が異常なほど、よかったので、進むことにしました。その日、私を入れて3名程見ましたが、殆んど一人でいる状態です。周りに誰もいないので、どこかで転落しても救助はありませんから、孤独との戦いです。そうおもって、用心して歩いていたのですが、突然200メートル程前方に藪からクマが飛び出てきました。向こうは全く気づいていませんので、眺めていました。よく観ると、藪の近くにもう一人70歳くらいの男性が居て、クマ笛を吹いてくれました。そのおかげで、クマがこちらに気づいて、逃げてくれました。まぁ、この地域のクマは
人間を恐れていますので、きちんと気づくようにすれば逃げてくれます。ただ、あと10分ずれていたら、クマと出会いがしらで遭遇して戦闘モードになっていたことでしょう、運が悪いのか良いのか分かりません。

早急にこの領域を離脱しようと、早歩きでクマが居たところを通過して、雪がなくなっているところは藪こぎで進んでいきました。そうして1時間程度経った後、左のアイゼンが外れて無くなっていることに気づきました。クマの怖さで藪こぎをいそいそと真剣になってしたので外れていることに気づかなかったのです。戻りましたが、見つかりませんでした。この日は気温が高かったので、普通はアイゼン入らない状態でしたが、斜面や気温が下がるともう行動できません。正直アイゼンを失くしてから、怖くてたまりませんでした。

一方、雪渓の登り降り、シュルントの通過、雪庇の判断をしながら、それが難しい場合、藪こぎ、と恐怖との戦いです。これはもう登山を楽しむ状況ではなく、一人で判断していく怖さでいっぱいです。

柄沢山を1時間程過ぎて、急な岩場の藪こぎや急な雪渓を登る必要がでてきましたが、そろそろ気温が下がってきましたので、ここでテントを張ることにしました。夜は翌日の天候と雪の状況が心配で初めは眠れませんでした。雪が気温が低くなると、氷になるのでアイゼンなしでは行動できません。さらに悪いことに緊急用の携帯の電源が入りませんから。
でも、可能な限り対策を講じた以上、それ以上は不安になってもしょうがないので、しっかり寝れるよう気分を変えました。

3日目、雪が緩む時間を狙って、ゆっくり起きました。不安に反して、7時半頃には雪が緩み始めて、8時頃にはアイゼンがなくても歩ける状態になっていました。天候もよかったです。最終日は順調に、巻機山迄行きました。それまで孤独との戦いでしたが巻機山に到着後、登山者が多くうんざりしました。人間とは勝手なものだなぁ(笑)、と自分の感情でそう感じてしまいました。巻機山からの下りは、人が多いと滑りやすく何度か転倒しましたが、無事に下山できました。清水村に到着後、旅館のご主人にタクシーと呼んで貰いました。さらにお茶まで頂き、最終日は何かよいサービスを頂きました。


■悪かった点:
1.クマに遭遇したことは致し方ないことでしょうが、クマ対策を全くしなかったことです。クマ笛の一つも持っていかず計画段階で考慮をしていませんでした。

2.その為、あるアクシデントが連鎖的に他のアクシデントを起こしたことです。クマに遭遇したことで、焦ってアイゼンをなくしました。これがもし極寒の雪山稜線だったら命はなかったのです。

3.携帯電話が使えなくなったのは電源が入っていたからです。普通切りますが、忘れていたのでしょう、携帯が電波を探して余計にエネルギーを消費するのです。山では携帯の電源を切らないと行けません。

■良かった点:
水分が必要だと思ったので、予備のガスボンベを持って行きました。翌朝の飲料の為、テントで多くの水を作りました。昼3L程飲みましたから、少し多めに持っていって良かったと思います。水だけは豊富でした。


感想:
課題が多すぎて解決に当たるのに疲れました。雪山は向いていないのではないか、と思うほど、ストレスフルな登山です。アイゼンを失くしたことではなく、連鎖的に起こるアクシデントは怖いのです。アイゼンの脱着も繰り返すので、もしかしたら、いい加減な結び方をしていたのかもしれません。そういうこと、一つ一つが慎重になるべきでした。しかし、それは裏を返せば、ストレスになります。今回は天気が良かったにもかかわらず、登山を楽しめなかった経験です。